物語のあるゲームを作りたいけれど、シナリオをどう書けばいいのか分からない。書き始めても途中で話が広がりすぎて、終わらなくなってしまう。この記事は、そんな人のために書きました。
ゲームシナリオを書く手順と、小説や漫画とは違う、ゲームならではの書き方のポイントを紹介します。
ゲームシナリオと小説の違い
ゲームシナリオの一番の違いは、物語の中で「プレイヤーが動く」ことです。 小説は読者が順番に読み進めるものですが、ゲームでは、プレイヤーが操作し、選び、ときには失敗します。シナリオは、その遊びと物語がかみ合うように書く必要があります。
| 小説 | ゲームシナリオ | |
|---|---|---|
| 物語を進める人 | 作者が決めた順番に読む | プレイヤーの操作や選択で進む |
| 主人公 | 読者が外から見守る | プレイヤー自身が主人公になることが多い |
| 文章の量 | 地の文で細かく描写できる | 画面の絵や音が多くを伝えるので、台詞は短めになる |
| 物語の形 | 一本道 | 一本道のほか、選択による分岐やマルチエンディングもある |
この違いを意識しておくと、「読ませる」だけでなく「遊びながら体験してもらう」シナリオに近づけます。
ゲームシナリオの書き方:6つの手順
シナリオは、いきなり台詞から書き始めるより、全体の骨組みを先に決めてから書くほうが、最後まで書き切れます。 次の順番で進めてみてください。
1. テーマと、プレイヤーに残したい気持ちを決める
最初に、「このゲームを遊び終えたとき、プレイヤーにどんな気持ちになってほしいか」を決めます。 「仲間と別れる寂しさ」「謎が解けたときのすっきり感」「怖さのあとの安心」など、一言でいいので言葉にしておきます。
テーマが決まっていると、エピソードを足すか削るか迷ったとき、「この場面はその気持ちにつながるか」で判断できます。
2. 主人公と、主要な登場人物を決める
主人公が「何を求めていて」「何がそれを邪魔しているのか」を決めます。 物語は、主人公が目的に向かって、障害を乗り越えていく過程で生まれます。
登場人物は、最初は少なめにしましょう。主人公、相棒、敵(または障害)の3人くらいから始めると、一人ひとりを丁寧に描けます。それぞれに、名前、性格、口ぐせ、主人公との関係を書いた簡単なメモを作っておくと、台詞を書くときにぶれません。
3. 世界観を、必要な分だけ決める
物語の舞台となる場所、時代、ルールを決めます。 ただし、設定を作り込みすぎて、本編が書けなくなるのはよくある失敗です。最初は「プレイヤーが物語を理解するのに必要な設定」だけを決め、細かな歴史や地名は、必要になったときに足していけば十分です。
4. プロット(物語のあらすじ)を組み立てる
物語の始まりから終わりまでを、箇条書きで並べます。 迷ったら、「起承転結」や、「始まり・中盤・終わり」の3つに分ける形で考えると組み立てやすくなります。
| 部分 | 書くこと |
|---|---|
| 始まり | 主人公と世界の紹介、物語が動き出すきっかけ |
| 中盤 | 目的に向かう道のり、障害、仲間との出会いや対立 |
| 山場 | 一番大きな障害との対決、テーマが強く出る場面 |
| 終わり | 結末と、主人公がどう変わったか |
ここで結末まで決めておくのが大切です。終わりが決まっていれば、そこに向かって伏線を置くことも、途中を削ることもできます。
5. 遊びと物語のつながりを決める
プロットの各場面で、プレイヤーが何をするのか(どんな遊びになるのか)を書き込みます。 「洞窟を探索する」「ボスと戦う」「仲間を説得する選択肢を選ぶ」のように、物語の出来事とゲームの操作を対応させます。
遊びと物語がかみ合うと、プレイヤーは物語を自分の体験として感じられます。たとえば「主人公が強くなる」場面と、「新しい技が使えるようになる」ゲームの仕組みを重ねると、成長がより実感できます。企画全体の組み立ては、ゲーム企画書の書き方も参考にしてください。
6. 台本(スクリプト)を書く
骨組みができたら、場面ごとに台詞とト書き(動きや演出の指示)を書いていきます。 書式に決まりはありませんが、次のように、話している人と台詞、演出を分けて書くと、あとでゲームに組み込むときに迷いません。
【場面3:村の入り口・夕方】
(BGM:静かな村の曲)
(主人公、村に入ってくる)
村長「よく来てくれた。まずは休んでいきなさい」
主人公「ありがとうございます。でも、急がないと……」
(選択肢:「すぐに出発する」/「一晩泊まる」)
ノベルゲームの場合は、使うツールの書式に合わせて書くと、そのまま組み込めて効率的です。ノベルゲームの作り方はノベルゲームの作り方で紹介しています。
分岐する物語の作り方
選択によって物語が変わるゲームでは、分岐が増えすぎないように設計するのが一番のポイントです。 選択肢を2つ置くたびに話が2つに分かれていくと、書く量があっという間に増えて、完成しなくなります。
分岐を作るときは、次のような方法で量をおさえます。
- 分かれても、また合流させる:選択によって途中の会話や場面は変わるが、物語の大きな流れは同じ道に戻す
- 結末の分岐は少なくする:エンディングは2〜3種類にしぼり、そこに向かう条件を決める
- 小さな違いを積み重ねる:選んだ内容によって、仲間の反応や台詞が少し変わるだけでも、選んだ実感は出る
分岐の全体像は、紙やツールで図にしておくと、つながりの矛盾に気づきやすくなります。
分岐する物語を書ける無料ツール
分岐のある物語を、図で確かめながら書けるツールもあります。 書いたものをそのまま遊べる形で確かめられるので、シナリオの手触りを早く確認できます。
Twine:コードなしで分岐する物語を作れる
Twine は、インタラクティブで、一本道ではない物語を作るための、オープンソースのツールです。 公式サイトによると、簡単な物語ならコードを書かずに作れ、必要に応じて変数や条件分岐、画像、CSS、JavaScript で表現を広げられます。作品は HTML として出力されるので、ほとんどどこにでも公開でき、商用利用も含めて自由に使えると案内されています。

デスクトップアプリのほか、ブラウザでもそのまま使えます。シナリオの分岐を試しに組んでみる道具としても便利です。
ink:ゲームに組み込むためのシナリオ言語
ink は、イギリスのゲーム会社 inkle が作った、ゲームのためのシナリオ記述言語です。 プログラムではなく、文章を中心に書き、その中に分岐などの指示を入れていく形式です。inkle によると、同社の『80 Days』などの作品で、数百万語にのぼる分岐の多い物語に使われてきました。

ink と専用エディターの Inky、Unity 用のプラグインは、MIT ライセンスで無料で使えます。Unity でゲームを作り、会話や分岐の多い物語を入れたい場合に向いています。
シナリオを最後まで書き上げるコツ
シナリオが完成しない一番の理由は、最初から長い物語を書こうとすることです。 次の点を意識すると、書き上げやすくなります。
- 最初は短い物語にする:最初の作品は、15〜30分で遊び終わる長さを目安にする
- 結末を先に決める:終わりが決まっていれば、途中で迷っても戻ってこられる
- 書いたら声に出して読む:台詞が長すぎないか、その人物らしい言葉になっているかが分かる
- 遊んでもらって直す:実際にプレイしてもらうと、説明が足りないところや、退屈な場面がはっきりする
まとめ
ゲームシナリオの書き方は、次の6つの手順です。
- テーマと、プレイヤーに残したい気持ちを決める
- 主人公の目的と障害、主要な登場人物を決める
- 世界観を、必要な分だけ決める
- 始まりから結末までのプロットを組み立てる
- 各場面で、プレイヤーが何をするのかを決める
- 場面ごとに台詞と演出を書く
分岐のある物語は、合流させたり、結末の数をしぼったりして、量をおさえて設計しましょう。まずは短い物語を1本、最後まで書き上げることを目標にしてみてください。
完成したゲームは、Devoch に掲載して、遊んでくれる人に届けることができます。