せっかく作ったアプリや Web サービスなら、少しでも収入につなげたい。一方で、「個人開発は儲からない」という声もよく耳にします。
この記事では、個人開発が「儲からない」と言われる理由と、その対処法を整理したうえで、収益を得るための主な方法を収益モデルごとに紹介します。ストアの手数料や必要な費用、収益化を始めるタイミング、収益が出たときに確認したいことまでまとめました。手数料や税金の基準は、2026年10月時点の公式の情報をもとにしています。
結論:最初は1つの収益モデルを小さく試す
個人開発の収益化は、最初から大きな収入を目指すより、次の順番で進めるのが現実的です。
- 使ってくれる人を増やす:収益は、使う人がいて初めて生まれます
- プロダクトに合った収益モデルを1つ選ぶ:広告、課金、買い切り、サブスクなどから、使われ方に合うものを選びます
- 小さく試して、反応を見ながら調整する:価格や課金する機能は、あとから変えられます
個人開発が「儲からない」と言われる理由と対処法
個人開発、とくに個人のアプリ開発が「儲からない」と言われるのには、いくつかの理由があります。理由ごとに、個人の作り手にできる対処法もあわせて見ていきましょう。
使ってくれる人がいないうちに、収益化を考えてしまう
一番の理由は、作ったものが使われる前に収益化を考えてしまうことです。 利用者がほとんどいない状態では、広告でも課金でも、収益はほぼ生まれません。
対処法:まずは無料で公開して、使ってくれる人を増やすことを優先します。収益化の方法は、どの機能がよく使われているか、何に価値を感じてもらえているかが分かってから決めても遅くありません。
似たアプリやサービスが多く、見つけてもらいにくい
ストアや検索の中には、すでに似たアプリやサービスがたくさんあります。 作っただけでは、その中に埋もれてしまいがちです。
対処法:「誰の、どんな困りごとを解決するか」を絞り込み、特定の人に強く刺さるものにします。広い市場で大手と競うより、自分が詳しい分野や、小さくても確かな困りごとに向けて作るほうが、見つけてもらいやすくなります。作るものの選び方は個人開発のアイデアの見つけ方で紹介しています。
宣伝にかけられる時間とお金が限られている
個人では、企業のように広告に大きな費用をかけたり、宣伝の担当者を置いたりすることができません。 開発に時間を使い切ってしまい、知ってもらうための活動が後回しになりがちです。
対処法:SNS での発信、紹介サイトへの掲載、ストアでの見せ方(ASO)など、お金をかけずにできる方法を、開発と並行して続けます。方法は個人開発アプリ・ゲームの宣伝方法やASOとは?でまとめています。
手数料や運営の費用がかかる
売上がそのまま手元に残るわけではありません。 ストアや決済サービスの手数料、開発者登録の費用、サーバー代などが差し引かれます。利用者が増えるほど費用が増える仕組みでは、売上より費用が先に大きくなることもあります。
対処法:作り始める前に、運営にかかる費用を見積もっておきます。費用が利用者数に比例して増える仕組みはできるだけ避け、少ない費用で長く続けられる形にしましょう。具体的な手数料や費用は、この記事の後半で紹介します。
それでも個人開発を続ける価値
個人開発には、少ない費用で、自分のペースで長く続けられるという強みがあります。 企業のように短い期間で大きな利益を出す必要がないので、小さな収益でも続けながら、少しずつ育てていくことができます。
また、収益が大きくならなくても、作ったものは技術力やものづくりの実績として残ります。そこから仕事の依頼や新しいつながりが生まれることもあります(この記事の「関連する仕事につなげる」で紹介します)。個人開発から大きく成長した例は、個人開発の成功例で紹介しています。
個人開発の主な収益モデル
| 収益モデル | 向いているプロダクト | 収益の安定性 | 始めやすさ |
|---|---|---|---|
| 広告 | 利用者や閲覧数が多い無料のアプリ・サイト | 利用者数しだい | 始めやすい |
| アプリ内課金・機能の解放 | 無料で使えて、追加の機能に価値があるもの | 中 | 中 |
| 買い切り | 一度買えばずっと使える道具・ゲーム | 発売直後に偏りやすい | 始めやすい |
| サブスクリプション | 継続して使い、価値が続くサービス | 高い | 準備が必要 |
| 寄付・スポンサー | オープンソースや無料で公開したいもの | 低〜中 | 始めやすい |
| 関連する仕事につなげる | 技術力や実績を示せるもの | 案件しだい | 中 |
| 売却 | 利用者や収益の実績があるサービス | 一度きり | 実績が必要 |
広告
無料で使ってもらい、画面に表示する広告から収益を得る方法です。 スマホアプリなら Google の AdMob、Web サイトなら Google AdSense などの広告サービスを使います。利用者が料金を払わなくてよいので、使い始めてもらいやすいのが利点です。
一方で、収益は表示される回数やクリックの数に左右されるため、利用者や閲覧数が多くないと大きな収入にはなりにくい方法です。広告が多すぎると使い心地が悪くなるので、表示する場所や頻度にも気を配りましょう。
アプリ内課金・機能の解放
基本の機能は無料で使えるようにし、追加の機能やアイテムを有料で提供する方法です。 「広告を消す」「保存できる件数を増やす」「便利な機能を使えるようにする」といった形がよく使われます。
無料で価値を感じてもらってから課金してもらう流れなので、何を無料にし、何を有料にするかの線引きが大切です。無料の範囲で十分役に立ち、さらに使い込む人ほど有料の機能が欲しくなる、という設計が理想です。
買い切り(有料アプリ・ダウンロード販売)
アプリやソフト、ゲームを、一度の支払いで買ってもらう方法です。 仕組みがシンプルで、利用者にとっても分かりやすいのが利点です。ストアでの有料アプリのほか、BOOTH などのダウンロード販売のサイトを使う方法もあります。
収益が発売直後や話題になったときに集中しやすく、継続的な収入にはなりにくいので、アップデートや新作と組み合わせて考えるとよいでしょう。
サブスクリプション
月額や年額で料金を払ってもらい、継続して使ってもらう方法です。 利用者が増えるほど毎月の収入が積み上がるので、収益が安定しやすいのが大きな利点です。
その代わり、払い続ける価値を感じてもらう必要があります。データを保存・同期する、毎日使う業務の道具になる、新しい情報や機能が届き続けるなど、使い続けるほど価値が増すサービスに向いています。解約の手続きを分かりやすくしておくことも、信頼につながります。
寄付・スポンサー
無料で公開しているものに対して、応援の気持ちとして支援してもらう方法です。 オープンソースのソフトなら、GitHub のスポンサー機能(GitHub Sponsors)を使えます。

GitHub の説明によると、個人アカウントへのスポンサーシップには GitHub の手数料がかからず、支援額の100%が開発者に届きます(Organization アカウントからのスポンサーシップには最大6%の料金がかかります)。収益の柱にするのは難しいものの、作ったものを無料で公開し続けたい人には合った方法です。
関連する仕事につなげる(受託・執筆など)
プロダクトそのものではなく、作ったことで得られる実績を収入につなげる方法もあります。 個人開発の作品は、技術力やものづくりの姿勢を示すポートフォリオになります。そこから開発の仕事の依頼や、技術記事の執筆、登壇などにつながることもあります。
サービスを売却する
利用者や収益の実績が積み上がったサービスは、事業として売却するという選択肢もあります。 Web サービスやアプリの売買を仲介するサイトもあり、自分で運営を続けるのが難しくなったときの出口にもなります。売却を考えるなら、利用者数や収益、運営にかかる費用を記録しておくと、価値を説明しやすくなります。
収益化にかかる手数料と費用
収益化を考えるときは、売上からどのくらいの手数料や費用が差し引かれるかも知っておきましょう。
App Store(iPhone・iPad アプリ)
App Store でアプリを配信するには、Apple Developer Program への登録が必要で、年間登録料は99米ドルです(登録時に現地通貨で表示されます)。
有料アプリやアプリ内課金の売上には Apple の手数料がかかります。個人や小規模な開発者向けには「App Store Small Business Program」があり、前の暦年と今の暦年の収益がそれぞれ100万米ドル以内であれば、手数料率が15%に下がります。

Google Play(Android アプリ)
Google Play でアプリを配信するには、Google Play Console のデベロッパー アカウントへの登録が必要で、登録料は1回限りの25米ドルです。
有料アプリやアプリ内アイテムの売上にはサービス手数料がかかります。Google の説明では、97%のデベロッパーはサービス手数料なしでアプリを配信していて、手数料がかかるデベロッパーの99%は15%以下の手数料の対象になっています。

日本のユーザーとの取引では、2026年9月30日を基準に、インストールが「新規」か「既存」かによって手数料が分かれる新しい仕組みになっています。たとえば、年間収益のうち100万米ドル分には「10%+請求手数料5%」といった率が設定されていて、課金の種類などによっても率が変わります。実際の率は、Play Console ヘルプの「サービス手数料」で確認してください。
Web サービスの決済
Web サービスで課金するときは、決済サービスを使ってカード決済などを受け付けるのが一般的です。たとえば Stripe の標準の料金体系では、カードでの決済が成功するたびに3.6%の手数料がかかり、初期費用や月額料金はかかりません。

運営にかかる費用
手数料のほかに、サーバー代、ドメイン代、外部の API の利用料なども毎月・毎年かかります。収益化を考えるときは、売上だけでなく、こうした費用を差し引いて手元にいくら残るかで判断しましょう。利用者が増えるほど費用も増える仕組みの場合は、特に注意が必要です。
種類別:どの収益モデルから始めるか
スマホアプリ
無料で公開し、広告か、機能を解放するアプリ内課金から始めるのが一般的です。 無料のほうがダウンロードしてもらいやすく、使ってもらいながら、どの機能に価値を感じてもらえているかを確かめられます。毎日使う道具なら、サブスクリプションも選択肢に入ります。
Web サービス
無料プランと有料プランを分けるやり方が始めやすい方法です。 無料で基本の機能を使ってもらい、使う量が多い人や、便利な機能が欲しい人に有料プランを用意します。閲覧数の多い情報サイトや道具なら、広告も選択肢になります。
ゲーム
無料で公開するなら広告やアイテム課金、有料で販売するなら買い切りが中心です。 まず無料版や体験版を投稿サイトで公開して反応を見てから、完全版を販売するという進め方もあります。ゲームの公開先は、フリーゲーム投稿サイトまとめで比較しています。
収益化を始めるタイミング
収益化は、使ってくれる人がいて、その人たちが価値を感じていると分かってから始めても遅くありません。 最初から課金の仕組みを作り込むと、完成までの時間が延びてしまいます。
まずは無料で公開して使ってもらい、よく使われている機能や、「お金を払ってでも欲しい」と言われる機能を見つけましょう。一方で、最初から有料にすると決めているなら、「この価格でも使いたい人がいるか」を早めに確かめておくことも大切です。
使ってくれる人を増やす方法は個人開発アプリ・ゲームの宣伝方法で、作るものの選び方は個人開発のアイデアの見つけ方でまとめています。
収益が出たら確認したいこと
会社の就業規則
会社に勤めながら個人開発をしている場合は、副業に関する就業規則を確認しておきましょう。 副業を禁止している会社や、事前の届け出を求めている会社もあります。収益化を始める前に確かめておくと安心です。
確定申告
収益が出たら、税金の申告が必要になることがあります。 国税庁の「給与所得者で確定申告が必要な人」によると、給与を1か所から受けている会社員などの場合、給与以外の所得の合計額が20万円を超えると、確定申告が必要です。

ここでいう「所得」は、売上そのものではなく、売上から必要な経費を差し引いた金額です。所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告が必要になることがあります。売上や経費(ストアの手数料、サーバー代など)の記録を残しておき、詳しくは税務署や市区町村、税理士に確認しましょう。
まとめ
個人開発の収益化は、次のように進めると無理がありません。
- まずは使ってくれる人を増やし、どこに価値を感じてもらえているかを確かめる
- 広告、アプリ内課金、買い切り、サブスク、寄付などから、プロダクトに合う収益モデルを1つ選ぶ
- ストアや決済サービスの手数料、運営の費用を差し引いて、手元に残る金額で考える
- 収益が出たら、就業規則と確定申告の基準を確認する
大きな収益をすぐに目指さなくても、続けながら少しずつ育てていけるのが個人開発の良いところです。
個人開発の全体の流れは、個人開発アプリの始め方でまとめています。